日本外国語専門学校 海外芸術大学留学コース 芸術留学プログラム

海外芸術留学科卒業生
レポーターProfile
イギリス留学中
埼玉県立芸術総合高校出身
海外芸術大学留学科2006年卒
ロンドン芸術大学セントラル・セントマーティン
グラフィックデザイン専攻





卒業制作のテーマはmy nostalgia

卒業作品みなさん、お久しぶりです。今回のレポートは卒業制作、卒業展、卒業式のことについて書かせて頂きます。


16歳のとき初めてLondonに来て、なんてステキな国なんでしょう!と思い19歳でLondonに住み始めて美術大学に4年間通って、たくさん笑って泣いて怒って つくって つくって つくって。うしろも、右も、左も脇目もふらず ひたすら 走って 気が付きました。ずいぶん遠くまで来たなっと。




卒業制作用のドローイング私の卒業制作のテーマは my nostalgia センチメンタルでノスタルジー、メランコリックな言葉では上手く言い表せない 気持ちや感情 を作品にしました。

懐かしいんだけど、どこか寂しくて、だけれど心のどこかがほっこり暖かくなって、嬉しいんだけど、悲しいような。そんな作品です。この作品をつくるまでに至ったお話を少ししようと思います。

Londonに来てからのこの4年間、ロンドン、アムステルダム、パリ、ブリュッセル、ヴェネチア、ベルリンと足しげく通った 蚤の市、マーケット、ヴィンテージフェア。

古くて 色あせて 壊れそうなぐらい 美しくて 人の手から手へ。前の持ち主の顔は わからなくても そのモノを見るとどんなに大切にしていたか、どんなに愛情を注いでいたかが伝わって、10年、50年、100年 自分が生まれる うんと前のその持ち主のことを考え、思いを馳せる、そんな時間が私は大好きです。

 

degree show私の作品の展示スペース
息を飲むほど美しい切手、愛おしい言葉がつづられたハガキ。何回も何回も直した痕のある大切に履かれた革靴そういったモノたちに ほぅ っと恋をするように、酔いしれます。

デザイナーがデザイナーとして認知されていない時代のモノたちは本当に美しい。職人技のような技術をおばあちゃんのおばあちゃん世代が、誰かの為にひと針ひと針刺繍したドレス。そういったモノから たくさんの事を学びました。 

 

そして ふっと思いました。古いヨーロッパのハガキや切手になぜ私はこんなにも言葉に言い表せない感情を抱くんだろう? と。私は日本人で ニホンで生まれて ニホンで19年間育ったのに。その答えは、私が子供の頃お気に入りだった絵本の中にありました。


毎晩必ず眠りにつく前に絵本を読んでもらっていました。「おやすみなさいフランシス」「くじらの歌声」「うさぎがくれたバレエシューズ」どれも大好きな物語です。



展示中にクラスの友達と
卒業制作の相談でお母さんと電話をしているときに、「けいは子供の頃、一番カロリーヌを読んで読んで!ってせがんでたよね」と言われて はっと思い出したんです。

それはフランス語で書かれていて、小さな女の子 カロリーヌが世界中を犬や猫と一緒に旅するお話です。とてもキレイな絵で、フランス語のわからないお母さんは挿絵に合わせてお話を作るので毎回読む度に違うお話にしてくれました。



そして主人公を私の名前で読んでくれるので自分も動物たちと一緒に旅をしている気分でした。電話で言われるまで、なぜかさっぱり「カロリーヌ」の絵本だけ忘れていました。

 


すべての原点となった絵本カロリーヌ
卒業式会場
卒業制作のリサーチにと、その絵本を送ってもらいました。久しぶりに開いた絵本を開いてビックリしました。その絵本のタイトルは   Caroline En Europe  ーカロリーヌ ヨーロッパの旅ー でした。

ドキドキしながら中を開くとそこに描かれていた景色はどれも見覚えのある風景でした。ロンドン、アムステルダム、パリ、ブリュッセル、ヴェネチア、ベルリン。

カロリーヌが動物たちと一緒に旅していた街に、私は無意識のうちにカロリーヌのあとを追っていたのです。もちろん子供の頃この絵本を読んでもらっていた時はヨーロッパがどこなのかさえ知りませんでした。

知らず知らずのうちに美術留学先をヨーロッパに決め、この4年間でカロリーヌが訪れた都市を旅したのです。

 

日本から来てくれた両親と そしてこの絵本は、昔おかあさんが同じく子供の頃におばあちゃんに読んでもらっていた彼女のお気に入りの絵本でした。そしてお母さんは新婚旅行先のニューカレドニアで偶然またこの カロリーヌ に出会い、嬉しさと懐かしさのあまり購入して、生まれてきた私にプレゼントしてくれたものでした。

全ての答えがこの絵本にありました。 なぜ子供の頃からヨーロッパという場所に憧れていたのかも。子供の頃、毎晩 絵本の中でしか会えなかった 街に モノに 懐かしさを感じるようになったのです。 アンティークマーケットで出会う古いモノたちに感じる言葉では上手く言い表せない懐かしいんだけど、どこか寂しくて、だけれど心のどこかがほっこり暖かくなる理由は、きっとこの絵本のせいでしょう。

こうして私の卒業制作はお気に入りの絵本へのトレビュート作品になりました。カロリーヌや、他の絵本に出てくる登場人物を絵にして小さな紙のパペットを作りました。
どこかに住んでいる誰かが、私がカロリーヌの絵本に感じたような感情を抱いてくれるように。1年後か 2年後か 5年後か 30年後か 私が死んだもっともっと後かわからないけれど。

 

卒業後はみんなバラバラ

そして6月中旬にCentral Saint Martins College of Art & Design -BA Graphic Design Degree Show-を  Nicholls and Clarke Buildingというショーディッチにある展示スペースで行いました。


1人に与えられるスペースはとても広く、たくさんのデザイナーやアーティストが見にきてくれました。

そこで私は作品の買い取りのお話と、ロンドンをベースで活躍しているバンドのアニバーサリーCDジャケットをアーティストとのコラボレーションとして、卒業作品と同じテイストで作ってほしいとの依頼が入りました。



式後友達と一緒に写真をたくさん撮りました
そして今年の7月に Central Saint Martins College of Art & Design  BA Graphic design courseを卒業しました!

場所はビックベンも見えるテムズ川沿いのRoyal Festival Hallで行われました。大学カラーの黒とピンクのローブと四角い帽子をのせ、とても楽しい卒業式でした。私の両親も卒業式に出席するため日本から来てもらいました。

1人1人名前を呼ばれ、壇上に上がり、大学の校長先生と握手をしてチューターの全員参加で、友達ともたくさん 写真を撮り、とても良い思い出となりました。

現在私はイタリアでデザインのお仕事を住み込みで行っています。次回は現在も継続中のロンドンで行っているインターンとイタリアでのお仕事のレポートを書かせて頂きます。




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