ロンドン芸術大学CSM
はじめまして。 これから約1年間、特派員としてレポートを書かせて頂く小林です。 私がイギリスの学校で学んでいる事や、たくさん出会った素敵な事などアートとデザインを中心に紹介していけたらと思います!どうぞ宜しくお願いします。
現在私はロンドンにあるCentral Saint Martins College of Art and Design(CSM)という学校でグラフィックデザインを勉強しています。
私の通っているCSMはジョンガリアーノやフセインチャラヤン、アレキサンダーマックイーンなどが卒業した学校として有名なのでファッションのイメージが強いですが、他のFine ArtやGraphic design、Jewelly designなど他の学科も、どれもとてもユニークです。
私が専攻しているGraphic design courseは、多分皆さんが思い描くグラフィックデザインとは大きくかけ離れたものだと思います。普通グラフィックデザインと聞くと、パソコンを使い2Dを主としてポスターやパッケージデザインを制作するイメージが強いですが、CSMのグラフィックデザインはコンセプトに重点をおき、そのコンセプトに一番合った作品を制作します。それが3Dであったり、インスタレーション形式の作品でも、コンセプトに沿ってさえいればどんな型の作品でも作成して良いという少しFine Artよりな考えの学校です。
チャンスが与えらえれるコンペ!
初回のレポートは1番最近の学校で行われたコンペティションについて書こうと思います。CSMは基本コンペティションが頻繁に行われます。それは学校内のものであったり、企業が直接CSMに依頼してくるものまで、種類はさまざまです。特に企業といってもファッションブランド、映画やグラフィックを中心にした雑誌など幅広い分野から依頼がきます。
例を上げると、Louis Vuitton2007年のショーウィンドウデザインが最近あった大々的なコンペティションです。私が参加していたコンペティションは、今年の1月の始めから3月の終わりまで行われていたHUGO BOSSというドイツのブランドのコンペでした。依頼内容は2009年のクリスマスショーウィンドウ、グリーティングカード、店舗内のデザイン、ラッピングデザインなどトータル的に全てのデザインを任せてくれる、といったものです。
このHUGO BOSSのコンペ、実は去年も同ブランドがCSMに依頼してきたもので前回私は1年生で友達のRobertaと一緒に参加したのですが、あえなく二次審査で落選。だから今年は去年のリベンジも兼ねてRobertaと気合い充分で望みました!基本的にコンペは1年生から3年生まで誰もが参加できる形式になっています。
パートナーと一緒にリベンジ!
1月の終わりにドイツからクライアント2人がやって来て、CSMの講堂でコンペの説明をしに来ました。その2週間後に書類審査があり、約120組の候補作品の中からHUGO BOSSが気に入ったコンセプトをセレクトし、40組に絞ります。その後、2月の中旬にまたドイツからクライアントが来て、今度は彼らの前で作品とコンセプトを直接プレゼンテーションします。
無事40組に残った私達は、プレゼン時間5分という中で何をどうアピールするかを考えて2週間で準備しました。この試験も私達は無事に通過し、semi final presentation(準決勝プレゼン)に残った20組に入ることができました。
3月の頭には、またドイツからクライアントが来て、今度はもっとプロフェッショナルにプレゼンを進めていきます。クライアントが直接手で触ったり、現実的に商品化するとどんな感じになるかなど、イメージしやすいように、それぞれのグループが試行錯誤を重ねた作品を持ってプレゼンに臨みます。
私とRobertaのプレゼンのポイントは、コンセプト、クリスマスアイコンとHUGO BOSSのブランドイメージとの兼ね合い、イメージカラーと作品の説明です。(素材は何か?大量生産に向いているか?など) 即座に質問されても答えられる準備も整えます。
このSemi final presentationでは全グループの作品のクオリティーはもちろん、プレゼンテーションの仕方や準備してきたモデルも、とてもレベルの高いものでした。CSMのコンペ担当チューターもHUGO BOSSのクライアント自身も学生達の作品のクオリティーの高さに驚いていました。
私もRobertaも去年の悔しさをバネに今回参加しましたが、良いものを作ろう、という気持ちと、何よりもお互いにとても満足のゆく作品が作れたので、もうこのSemi finalの時点で落選しても悔いはありませんでした。何よりも、ここでしか得られない最高の経験が出来た事に感謝していました。
現役の学生が現在進行中のプロジェクトに参加し、本物のクライアントの前でプレゼンテーションできる機会が与えられるなんて滅多にある事ではありません。他の生徒の作品も見る事ができたので、とても参考になりました。
まさかの決勝プレゼン
その2週間後、まさかのFinal presentation(決勝プレゼン)通過でした!
私もRobertaも予想もしていない結果だったので、知らせを聞いたのはたくさん人がいる本屋さんの中だったのですが、2人して叫んで笑って泣いて大騒ぎして喜びました♪始めから考えると120組からのTOP 10入りという事になります。
でも私達に喜んでいる時間はありません。約1週間後に最後のfinal presentationが迫っていました。徹夜で学校の課題を終わらせ、そのままパートナーの家に泊まり込み、2人でまた徹夜をしてHUGO BOSSの作品を作り上げる、といったスケジュールです。
クタクタの体と寝不足と疲労で変に火照った体を引きずる様にプレゼン会場に2人で向かいますが、ここまで残れた自分たちに興奮して気持ちのいい緊張感が少し心地よかったのを覚えています。すると中には、HUGO BOSSのクライアントの姿はなく待っていたのは1台のカメラ。 まさかのウェブカメラで国際電話でのプレゼンテーションが待っていました!
ここまで勝ち残った10組も誰も事前に知らされず、ビデオカメラの奥で元気に手を ふるクライアント達。ロンドンにきて3年、たくさんビックリしたり、非常識な事に頭にきたりしてきましたが、こんな事態は初めてでした。私達の発表は3番目。見せたいモデルはカメラのレンズの前にまで持って行き、エコーがかる音声にもあまり影響されず、約7分間のプレゼンテーションを終えました。
10組全部のプレゼンテーションが終わると、HUGO BOSSのクライアントが最後に「どの作品も全てユニークでどれもとてもクオリティーが高くて最優秀作品を選ぶのにはかなりの時間がかかります。約3ヶ月、我々の為に時間と体力、たくさんのものを費やしてくれて本当にありがとう。是非このFinal presentationまで残ったことを誇りに思ってください。」とおっしゃってくれました。
この時に本当に参加して良かったなという気持ちと、とても貴重な体験ができたな、と感じました。そしてなによりここまで一緒に頑張ってくれたパートナーのRobertaがいてくれたから最後まで頑張れたと思います。もともとグループワークが苦手な私だったけど、お互い励まし合い、どちらかが落ち込んでいたらポジティブな言葉を掛け合う、とても良いパートナーと最高の作品作りが出来たと思います。
4月4日現在、まだHUGO BOSSから結果は出ていません。でもどんな結果がでようとここまで残ったことに私もRobertaも誇りに思っていて、何よりも2人とも自分達が作ったものに満足しています。 でも、この後もっとステキなお知らせが出来たら、それはそれで嬉しいです!
残念ながら私達が作った作品の写真は審査中という事と、クライアント側の規定により 一般のネット上には載せられない事になっています。ごめんなさい! 最優秀作品に選ばれた作品は、今年のHUGO BOSSのクリスマスショーウィンドーに採用され、全世界1300店舗展開です!この中には日本の六本木にあるHUGO BOSSも含まれています。
今年の冬、六本木に行く事があったら、ついでにHUGO BOSSのショーウィンドーもチラっと覗いて下さい♪
きっとそこにはウェブカメラでのプレゼンを勝ち残った10組の誰かがデザインした作品になっているハズです*