カナダ留学現地レポート

REPORTER

埼玉県立浦和第一女子高校出身 
アメリカ・カナダ留学コース2007年卒

マウント・アリソン大学/宗教学専攻(4年制)

2010年4月

 

3年目のカナダ。でも実はまだ何も知らない!

母。トロント地下鉄

「カナダは好き?」「カナダはいいところ?」こっちに留学して3年目です、こんな質問簡単に答えられるだろう、と思われるかもしれませんが・・・・。私はずっと、ずぅっとニューブランズウィック州のサックビルという恐ろしく小さな町にいたんです。ここには何もないんです。車がなければこの町から出るのはなかなか難しい。車ないです。免許とってないし。
 
ナイアガラの滝だって見たことありません。ロッキー山脈だって見たことありません。真っ赤に燃えるセントローレンスの紅葉だって見たことありません。メープルシロップだって年に数回しか使いません。あ、赤毛のアンの島PEIには行きました。でもそれだけです。
 
だから、「カナダってどんな所?」「好き?」って聞かれるたびに「・・・・・・わかんない」って答えてきました(苦笑)。でもついに、3年目の冬休みにして、行ってきましたょ国際都市トロント。世界で最も多文化な都市トロント。というわけで今回はトロントレポートです。

母と訪れたいろいろな街

CNタワー

きっかけは母でした。ふいに遊びに来るって言うんです。はるばる日本から来てくれるのにサックビルに1週間なんてわけにはいかないよねぇ、ということで母と二人でトロントの小さなB&Bホステル(Bed & Breakfast)に三日ほど滞在しました。
 
サックビルから出て行った私にとってトロントはやはり大都会。「うわっ、ビルだ!!車だ!!っつか人多いなっ!!!」有名なCNタワーはどうだったかって?そうですね、昼のCNタワーはさびれた遊園地の展望台みたいです。かなり侘しいです。夜のCNタワーはクリスマスだからなのか緑と赤に光ります。かなりダサいです。そのくせ登るには20ドルかかります。
 
ちなみに東京タワーは800円です。「20ドルは高すぎるょ」「でもせっかくトロント来たんだから登らなきゃって気がしない?」なんて相談をしながらトロントまで来た私たちですが、CNタワーを見つけてからはそんな相談さえストップしました。暗黙のうちに登らないこと決定。それにしても、あのダサさはなかなかよかったですね。「わぁ綺麗。・・・でも東京タワーの方が綺麗」なんて中途半端に頑張られるくらいなら、徹底的に侘しい方がいいじゃないですか。

ナイアガラの滝と私

ナイアガラの滝は、あまり期待せずに行ったわりにはよかったです。丸一日感動し続けるのは無理ですけど、目にして最初の数分は「うわっ、すげー。すっげーー!すっげぇぇーーーー!!」ってなると思います。
 
で、20~30分くらいしたら「寒いから室内入ろうょ」と。夏だと船に乗って滝のすぐ近くまで行けるんですけど、冬はそれは無理です。でもその代わり、水しぶきが凍りついて滝周辺の橋やベンチは北海道の氷爆祭りみたいになってます(って言ってもわからない人の方が多いのかな。雪祭りではなく氷爆祭り。内容は読んで字のごとくです)。
 
これはなかなか綺麗です。見る価値はあると思いますよ。

死海文書に思わず興奮!

地下へ。死海文書

Royal Ontario Museumでは大変興奮しました。ここは私が行きたい場所ではなく、母が行きたい場所で渋々だったのですが・・・行ってみたらなんと巡回展示物として死海文書があるではありませんか!!!!死海文書というのは最近発見された、現存するなかでは最も古い聖書です。
 
この聖書は今の聖書と比べて同じところもあれば違うところも多くあります。「異端」として現在のユダヤ教・キリスト教では認めていない文書も入っています。これは宗教的立場からも宗教学的立場からも(宗教と宗教学は全然違います)今までの常識をくつがえす大発見です。それをまさかこの目で拝めるとは・・・。あれは素晴らしかったです。“oh thanks God, did you know I was coming to Toronto?”なんて感謝しながらじっくり拝ませてもらいました。もし同じ宗教学専攻の生徒と一緒にいたら、あの薄暗い地下で3時間はつぶせましたね。

トロントの感想

ナイアガラは都会だなぁ

全体的な感想としては、まぁ悪くないけど特にまた旅行に行きたいとも思わない街でした。なんというか、多文化すぎて、“これ”というカラーが見えてこないんです。
 
例えばバンクーバーなら(行ったことないけど)アジアンって感じがするでしょうし、モントリオールなら(行ったことないけど)フランスって感じがするんでしょう。でもトロントは・・・、母の言葉を借りれば「寒くて小さい新宿」。
 
もちろん私はあそこに3日しかいなかったし、「そんな事ない、トロントはとってもユニークな街だ!」って言う人もいるでしょう。ただ、今回の旅行に関してのみの個人的な感想としては、「働いたり勉強したりするにはいいだろうけど、観光として来る必要はないかなぁ」と思いました。
 
でもしばらくの期間住んでみたいですね。別にトロントじゃなくて新宿でもいいけど(笑)。さて今なら私も「カナダはどんな所?」って質問に答えられるでしょうか。・・・・・・無理だなぁ。

2011年3月

 

留学を振り返って。大変だったけど行ってよかった!

カナディアンロッキー

こんにちは。カナダのMount Allison Universityを卒業した櫻井です。4年間楽しく書いてきた留学レポートも今回が最後。ちょっと寂しいです。毎回その時に伝えたいことをただつらつらと書いてきましたが、今回は最終話らしく「留学を振り返って」をテーマにしようと思います。進路の選択肢として海外大学を視野に入れている皆さんの中には卒業後の就職について興味がある方もいらっしゃると思うので、私なりの就活についてもお話します。少しでも参考になれば幸いです。
 
留学してどうだったか、という問いにはシンプルに答えられます。「楽しかった」、「大変だった」、そして「行ってよかった!」。比較主義で多視点主義、何についても極力断定を避ける私ですが、この3つの感想については断言します。高校の先生に反対されようとも、親の説得に時間がかかろうとも、私は海外大学に正規留学して本当によかったです。

カナダの雄大な景色

なぜか? 第一に、状況を切り開くという経験を得たからです。入学してすぐは友達もいない、家族も遠い、授業もわからない、文化が嫌、日常会話さえマトモにできないという八方塞がりの状態でした。何もかもが行き詰まっていました。
 
「…一体なにから手をつければいいんだ?」その状況下で私が試みたのは一点突破です。全精力を勉強に注ぎ込み、まずそこを打破しようとしました。必死に頑張ってそこを打破したとき、友達・文化・言葉の壁といった他の問題も自然と解決していたんです。これは大きな発見でした。
 
一見あまり関係のないようにみえる様々なことが実はつながっていて、一点を解決すると他の問題も解決できる、もしくは解決のために何をすべきなのかが見えてくるんです。これに気づくことで、気長で楽観的で実践的になれたように思います。自信をもってマイペースに自分ができることをやっていく力をくれました。

インドサマー留学

第二に、自分の無力さと人に感謝することを知ることができたから。留学前の自己中心的で傲慢な私は、ともすれば自分一人の力で生きているかのように考えがちでした。でも留学して何もわからず何もできずという状況に入ったことで、どれほど人に支えられているか気付きました。授業については教授や先輩に助けていただきました。カナダ文化を好きにしてくれたのは友達でした。地球のほとんど反対側にいる家族はずっと胸の中にいました。日本にいる友達の存在も支えでした。「私は一人じゃ何にもできないんだな。沢山の人が私を支えていて、いろんな人が私という人間を形成しているんだな」と心から思いました。留学して強くなったかな、と感じると同時に己の無力さに気づけたことは大きな収穫だと思います。
 
留学して何を得るかは人それぞれです。その人の性格、経験、専攻、まわりの人達、いろんなことが影響してきます。でもきっと何かを得るはずです。どうか、あなたの財産を得てきてください。

海外大卒はウケない?日本での就職活動

彼とは話題がつきなかった…。同じ宗教学専攻の仲間

ではここからは就活について…。私は、働く場所はカナダでも日本でもそれ以外でも、こだわりはありませんでした。ただ、将来どこに住むことになってもいいけれどその前に数年は日本に住みたいという思いはあったので、とりあえず新卒就活は日本で、と決めました。
 
「海外大卒は大企業にウケない」とか「いや、中小の方がウケない」とかバラバラな噂を耳にしていましたが、個人的な感想を述べるなら関係はなかったように感じます。欲しい人物像についても普遍の正解はありませんでした。 たとえば、ある企業は「物怖じしない」という理由で私に内定をくださり、またある企業には「生意気」という理由で断られました。また別の企業は「マイペース」という理由で内定をくださったのに対し、別の企業からは「闘争心がない」という理由で落とされました。言い方が違うだけで意味することは同じです。そして、“物怖じしない(生意気)”“マイぺース(闘争心がない)”これらは確かに私に当てはまります。「採用の仕事をする方は人を見抜く目があるんだなぁー」と感心していました。

モントリオールのバーで

就活において私が心がけていたのはただ一つ、「嘘をつかない」だけです。実際より良くみせようとせず、ただありのままの私をみていただこう、と。あくまでこれはある一人の人間のやり方です。正解ではありません。ただここで伝えたいのは―…海外大卒という経歴によって就活が不利になることはないです。安心してください。それから、「英語話せます」「視野が広がりました」というような留学した結果として当たり前の売りではなく、留学を通して“あなたが得た”“あなたにカスタマイズした”強みを持って臨んでください。きっと大丈夫です。
 
今はけっこう楽しく働いています。家賃・光熱費・食費にあえいでいるくせに、ここに付け加えたいのは学費です。留学で得たもう一つの結論…「私は宗教学が大好きです」。仕事も意外に楽しいけれど、宗教学にはかなわない。私の中でこれはダントツです。なんとしても再開したい、続けていきたいと目論んでいます。
 
また直接宗教学を学ぶか、宗教学を深めるために哲学・歴史・言語学といった他の学問に手をつけるか…(本当に全ての学問は繋がっているんです。私は上記に述べたような見地から宗教を考察するのが好きですが、人によっては科学から、数字から、または経済から宗教を論じる方もいます)。通信科で大学に通おう。お金をためて院に行こう。どうなるかはわかりません。「こんなに好きなんだから続けていきたい」という思いがあるだけです。学校に戻ることになった場合、日本か海外かもわかりません。もし海外だったら…またここで留学レポを書けたら嬉しいです。
 
正規留学は大変ですよ。楽しいですよ。得るものいっぱいありますよ。行ってらっしゃい!