イギリス留学現地レポート

REPORTER

関西学院大学出身 
海外芸術留学コース2009年卒

ボンマス芸術大学 コスチュームデザイン専攻

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2011年7月

 

イギリス人のクラスメイトと学んでいます!

1年生のときに作ったコスチューム

はじめまして。これから1年間レポートを書かせていただく山本と申します。私がイギリスの学校で学んでいることやイギリスでの経験についていろいろ書いていけたらと思っています。よろしくお願いします。
 
私は今、イギリスのBournemouth(ボーンマス)というところにあるThe Arts University College at BournemouthのBA (Hons) Costume with Performance Designに在籍しています。つい最近2年生が終わったばかりで今年の9月に3年生になります。
 
Bournemouthはロンドンから南西に2時間ほど長距離バスでいったところにあります。海が近く、またロンドンにも日帰りで行くことができます。しかしロンドンとは違い、自然しかないので勉強に集中できますし、また学校の先生方もとても面倒見が良いのでとても良い環境だと思います。クラスメイトも私のコースはイギリスでも有名なコースなので人数は約70人ほどいますが、留学生は10人くらいで(アジアからは私だけで他はヨーロッパ圏やアメリカ、オーストラリアなど。他のコースでも大体日本人は学年に一人です)他は全員イギリス人ばかりなので英語を伸ばすにも良い環境だと思います。
 
私は日本の大学では心理学を勉強していてそのあとファッションデザインを勉強したいなあと思ったのですが、美術はまったくの初心者でしたので1年間JCFLの海外芸術大学の留学科でアート&デザインの基礎を学びました。最初は自分にアート&デザインが適しているのか、本当にやっていけるのかもわかりませんでしたが、親もびっくりするほど勉強に集中し、また無遅刻無欠席で学校に通うことができ、この1年間で学んだことは留学した今でも役に立っていると思います。

コスチュームデザインについて

1年生のときのセットモデル

次に私がコースで勉強していることについてですが、コスチュームデザインというのは日本であまり勉強できるところがまだまだ少なく、わかりにくいと思うので説明したいと思います。コスチュームデザインは舞台、映画、CM、ダンス、サーカスなどの衣裳のデザインのことを指します。ファッションデザインと似ているように感じる人が多いと思いますが、全然違っていてコスチュームデザインは衣裳だけをデザインするというより脚本からキャラクターの性格や心情を読み取り、それぞれのキャラクターをデザインします。コスチュームデザインのデザイン画では顔やポーズなどもとても重要です。また、コスチュームの色や形、染み一つにも物語があります。コース名には‘コスチューム’とだけありますが、私が入学した年からカリキュラムが変わり、今ではコスチュームデザインとセットデザインを半々で学んでいます。セットデザインとは日本でいう舞台美術のことを指していて、舞台、映画、ダンス、サーカスなどのセットをデザインしています。コスチュームと同じように舞台のセットにおいてもセットの形や色には意味が込められています。そしてセットデザイナーはモデルボックス(舞台模型)も作ります。
 
次に学校のカリキュラムについてお話したいと思います。私のコースでは3年間を通してコスチューム&セットのデザインとメイキング両方学べるようになっていますが、1年生のときはまず9月から12月までの間にコスチューム&セットデザインの基礎(モデルメイキングの基礎、コスチュームデザイン画の描き方、デッサン)とコスチュームメイキングの基礎を学びます。
 
私はコスチュームメイキングのほうはほとんど初心者の状態でしたが、1か月のうちにコスチュームメイキングに必要なすべての手縫いの方法や裏地の処理の仕方などすべての基礎を学び、最終的に1か月でコルセットの半分を完成させました。またコスチュームメイキングの仕事には必要な色や模様の布が見つからなかったときは自分たちで加工することもありますので染めやシルクスクリーン、アップリケなど布の加工の仕方を学ぶ授業もあります。

実際にコスチュームを作りました!

1年生のときのコスチュームデザインのデザイン画

1月からはそれまでに学んだコスチューム&セットデザインの基礎、コスチュームメイキングの基礎知識を活かした応用の授業が始まります。最初のデザインの授業では英語で脚本を読み、コスチュームとセット両方のデザインをします。日本では聞き慣れない言葉だとは思いますが、イギリスではScenographyといってコスチューム、セットの両方を一人のデザイナーがデザインすること(ときにはlighting designも含む)が主流となっています。
 
コスチュームとセットはそれぞれだけでは成り立たなく、両方が影響しあっているので時には一人のデザイナーがデザインをしたほうが良いこともあるのだと思います。私の学年からカリキュラムが変わり、それまではシェイクスピアのデザインをしていたようですが、最近はコンテンポラリーの舞台がほとんどを占めているということで現代の舞台のデザインをしました。
 
そして3月からはコスチュームメイキングのほうに移りました。初めてのフルコスチュームをここで作ることになります。デザインは自分たちでするのではなく、デザイン画を渡され、完全にメイキングのほうに集中します。これはプロのコスチュームメイカーの人たちはデザイナーのデザイン画から意図を汲んでコスチュームを作らなくてはならないので良い経験だったと思います。私の学年のときはfemaleの衣裳を作る人とmaleの衣裳を作る人がいて(選べません。先生から指定されます)私はfemaleの衣裳を作りました。そして6月にあった年度末のshowで実際にアクターコースの人たちが演じた舞台になりました。こういった他のコースとのコラボレーションができるというのは私の学校全般の特徴でとても良いことだと思います。私のコースは主にacting、make-up、stage management、modelmakingやanimationコースと関わることが多いです。
 
初回のレポートでは私が1年生でやったことについて振り返りましたが、次回は2年生になって実際に関わった舞台のことなどをレポートしたいと思っています。

2011年11月

 

デジタルでのデザイン技術修得

最初に参加した舞台

こんにちは。山本です。9月の末にイギリスに戻ってきてとうとう最終学年が始まりました。今回のレポートでは、2年次に私がやったことを振り返りたいと思います。
 
2年次で私はデザインを選択したので、最初の3ヵ月でデザインの技術をさらに学びました。最近ではシアターの世界でもデジタルを取り入れ出したので、セットモデルを3Dで表現する「Google Sketch Up」というソフトウェアの使い方を学んだり、1年生のときに習った 「Adobe Photoshop」を使ってコスチュームのデザイン画を描くということをさらに発展させたり、Adobe Illustratorやレザーカッターの使い方などを修得しました。

最初に参加した舞台

シアターの世界はまだまだ他の業界に比べるとデジタルを取り入れているところは少ないですが、自分のデザインの幅を広げるにはとても役に立ったなあと思います。
 
こういった技術を学ぶと同時に、シアター業界の仕事について知る「Supervisor Workshop」というイベントもありました。
 
シアターの世界でも映画業界でも仕事は細かく分かれていて、その中の1つにSupervisorという職があります。スケジュールを管理したり、デザイナーが求める布や靴などを探してきたりというのがSupervisorの主な仕事です。
 
「Supervisor Workshop」では、映画業界やシアター業界で働いているプロフェッショナルが学校に来てくれて、仕事の疑似体験をすることができました。これはうちの学校の特徴でもあると思うのですが、在学中にシアターや映画の様々な仕事を体験することができるので、それが卒業後の就職率の高さに現れていると思います。

自分の得意なものに気づくことができた

2回目に参加した舞台のモデルボックス

1月からのユニットでは、18世紀が舞台の戯曲のコスチュームとセットのデザインをしました。1年生の時には、1960年代の現代の戯曲のコスチュームとセットのデザインをしたので、今回はまったくの別世界です。
 
それとセットアシスタントとSupervisorを同時に体験する機会があったのですが、私はどうしても2年生のうちにLive Production(実際の舞台のこと)に関わりたかったのでセットアシスタントに応募して自分の課題と並行して半分半分ですることになりました。
 
1年目にそういったことをしなかったのは自分の英語力がまだ十分ではないと思ったこと、技術を学ぶことに集中したかったという理由があったからです。しかし、2年生になって一通りの技術を学び終わって、自分の英語力にもさほど不自由はしなくなったのと、将来シアターで働く上で実際の舞台に関わることが必要だと思ったので、チャレンジすることにしました。
 
アシスタントとして、Set constructing(実際の舞台を作ること)やScenic Painting(シアターのセットを塗ること)をもう1人のアシスタントとすべて一から行いました。時には木をのこぎりで切ったり、ドリルを使ったりと非常に男っぽい作業が多く、体力がいる作業でしたが、何もなかったシアターの空間が作り上げられていき、一つの劇空間ができたときの充実感は何よりも変えがたいものがありました。私はアシスタントをする前から、自分はセットに興味があり、セットデザインをすることのほうがどちらかというと得意なのかなあと思っていましたが、この体験によりそれを確信しました。

夢に向けての第一歩

実際の舞台

このユニットが終わったあと、2年生最後の課題から初めて自分でやることを選べるようになりました。私はセットでのLive Productionの経験を増やしたかったこと、技術を2年生のうちにdevelop(進化)させて3年生になってからcreativeな面をdevelopさせたかったので私のコースのセットデザインの先生のアシスタントデザイナーをすることになりました。
 
前回はデザインの段階からは関わっていませんでしたが、今回はモデルボックス作り、デザインのdevelopment、マテリアルやデザインのために必要な資料のリサーチから実際のセットを作ることまですべてにおいて関わることができました。
 
実際、卒業後、セットデザイナーになるためには最初にアシスタントデザイナーをすることになるので今の段階で一人のデザイナーの下でじっくり関わっていろいろ学ぶことができたのは何よりも代えがたい経験になりました。