イギリス留学現地レポート2009年4月
ロンドン芸術大学CSM
現在私はロンドンにあるCentral Saint Martins College of Art and Design(CSM)という学校でグラフィックデザインを勉強しています。 私の通っているCSMはジョンガリアーノやフセインチャラヤン、アレキサンダーマックイーンなどが卒業した学校として有名なのでファッションのイメージが強いですが、他のFine ArtやGraphic design、Jewelly designなど他の学科も、どれもとてもユニークです。 私が専攻しているGraphic design courseは、多分皆さんが思い描くグラフィックデザインとは大きくかけ離れたものだと思います。普通グラフィックデザインと聞くと、パソコンを使い2Dを主としてポスターやパッケージデザインを制作するイメージが強いですが、CSMのグラフィックデザインはコンセプトに重点をおき、そのコンセプトに一番合った作品を制作します。それが3Dであったり、インスタレーション形式の作品でも、コンセプトに沿ってさえいればどんな型の作品でも作成して良いという少しFine Artよりな考えの学校です。 チャンスが与えられるコンペ!
例を上げると、Louis Vuitton2007年のショーウィンドウデザインが最近あった大々的なコンペティションです。私が参加していたコンペティションは、今年の1月の始めから3月の終わりまで行われていたHUGO BOSSというドイツのブランドのコンペでした。依頼内容は2009年のクリスマスショーウィンドウ、グリーティングカード、店舗内のデザイン、ラッピングデザインなどトータル的に全てのデザインを任せてくれる、といったものです。 このHUGO BOSSのコンペ、実は去年も同ブランドがCSMに依頼してきたもので前回私は1年生で友達のRobertaと一緒に参加したのですが、あえなく二次審査で落選。だから今年は去年のリベンジも兼ねてRobertaと気合い充分で望みました!基本的にコンペは1年生から3年生まで誰もが参加できる形式になっています。 パートナーと一緒にリベンジ!
無事40組に残った私達は、プレゼン時間5分という中で何をどうアピールするかを考えて2週間で準備しました。この試験も私達は無事に通過し、semi final presentation(準決勝プレゼン)に残った20組に入ることができました。 3月の頭には、またドイツからクライアントが来て、今度はもっとプロフェッショナルにプレゼンを進めていきます。クライアントが直接手で触ったり、現実的に商品化するとどんな感じになるかなど、イメージしやすいように、それぞれのグループが試行錯誤を重ねた作品を持ってプレゼンに臨みます。
このSemi final presentationでは全グループの作品のクオリティーはもちろん、プレゼンテーションの仕方や準備してきたモデルも、とてもレベルの高いものでした。CSMのコンペ担当チューターもHUGO BOSSのクライアント自身も学生達の作品のクオリティーの高さに驚いていました。 私もRobertaも去年の悔しさをバネに今回参加しましたが、良いものを作ろう、という気持ちと、何よりもお互いにとても満足のゆく作品が作れたので、もうこのSemi finalの時点で落選しても悔いはありませんでした。何よりも、ここでしか得られない最高の経験が出来た事に感謝していました。 現役の学生が現在進行中のプロジェクトに参加し、本物のクライアントの前でプレゼンテーションできる機会が与えられるなんて滅多にある事ではありません。他の生徒の作品も見る事ができたので、とても参考になりました。 まさかの決勝プレゼン
でも私達に喜んでいる時間はありません。約1週間後に最後のfinal presentationが迫っていました。徹夜で学校の課題を終わらせ、そのままパートナーの家に泊まり込み、2人でまた徹夜をしてHUGO BOSSの作品を作り上げる、といったスケジュールです。 クタクタの体と寝不足と疲労で変に火照った体を引きずる様にプレゼン会場に2人で向かいますが、ここまで残れた自分たちに興奮して気持ちのいい緊張感が少し心地よかったのを覚えています。すると中には、HUGO BOSSのクライアントの姿はなく待っていたのは1台のカメラ。 まさかのウェブカメラで国際電話でのプレゼンテーションが待っていました! ここまで勝ち残った10組も誰も事前に知らされず、ビデオカメラの奥で元気に手を ふるクライアント達。ロンドンにきて3年、たくさんビックリしたり、非常識な事に頭にきたりしてきましたが、こんな事態は初めてでした。私達の発表は3番目。見せたいモデルはカメラのレンズの前にまで持って行き、エコーがかる音声にもあまり影響されず、約7分間のプレゼンテーションを終えました。 10組全部のプレゼンテーションが終わると、HUGO BOSSのクライアントが最後に「どの作品も全てユニークでどれもとてもクオリティーが高くて最優秀作品を選ぶのにはかなりの時間がかかります。約3ヶ月、我々の為に時間と体力、たくさんのものを費やしてくれて本当にありがとう。是非このFinal presentationまで残ったことを誇りに思ってください。」とおっしゃってくれました。 この時に本当に参加して良かったなという気持ちと、とても貴重な体験ができたな、と感じました。そしてなによりここまで一緒に頑張ってくれたパートナーのRobertaがいてくれたから最後まで頑張れたと思います。もともとグループワークが苦手な私だったけど、お互い励まし合い、どちらかが落ち込んでいたらポジティブな言葉を掛け合う、とても良いパートナーと最高の作品作りが出来たと思います。4月4日現在、まだHUGO BOSSから結果は出ていません。でもどんな結果がでようとここまで残ったことに私もRobertaも誇りに思っていて、何よりも2人とも自分達が作ったものに満足しています。 でも、この後もっとステキなお知らせが出来たら、それはそれで嬉しいです! 残念ながら私達が作った作品の写真は審査中という事と、クライアント側の規定により 一般のネット上には載せられない事になっています。ごめんなさい! 最優秀作品に選ばれた作品は、今年のHUGO BOSSのクリスマスショーウィンドーに採用され、全世界1300店舗展開です!この中には日本の六本木にあるHUGO BOSSも含まれています。 今年の冬、六本木に行く事があったら、ついでにHUGO BOSSのショーウィンドーもチラっと覗いて下さい♪ きっとそこにはウェブカメラでのプレゼンを勝ち残った10組の誰かがデザインした作品になっているハズです! 2009年8月
選択肢を広げるファウンデーションコースについて
7月に入り夏休みで友達や先生もみんな国に帰るシーズンになりました。今回は私が通っている学校のコースの事や授業の進み方、校舎の雰囲気を写真と一緒にお話しようと思います。 ロンドンに留学して3年がたちました。始めはCentral Saint Martins College of Art and Design(以下CSM)のFoundation courseに1年間通いました。これは基礎科のようなコースで大きく分けて2部に分かれており、前半は先攻を決めずアート&デザイン全てを勉強します。絵を描いたりモノを作るのは大好きだけど自分は何が合っているのかわからない、という方にはこのコースをお勧めします。Fine Art(ペインティングや彫刻),Fashion(ウィメンズウェアーやテキスタイル),3D design(プロダクトやジュエリーデザイン), 2D design(グラフィックデザインや写真)の全てを経験できます。後期は自分が選んだ専攻に分かれ、その授業だけを受けます。このコースは基礎科なのでクラスメートのほとんどは10代ととても若いです。 専門を深める学部コースについて
1年生はデザインの授業を広く浅く学びます。なので課題数もとても多いです。2週間に1プロジェクトぐらいです。(CSMは基本グラフィックデザインに限らずファッションなども比較的他のUniversity of the Arts London (UAL)の学校の中では課題数はかなり多い学校です。) 2年生は専攻を4つの中から選びます。グラフィックデザイン1、グラフィックデザイン2、イラストレーション、ムーヴィングイメージのクラスに分かれ授業を行います。そして1年生よりも断然コンペティションの課題も増えます。そして3年生はたくさんの課題もこなしながら卒業論文と卒業制作に主に力を入れるといった感じになると思います。 以上、私が3年間ロンドンのCSMで通った学校とコースの説明です。 ロンドン芸術大学・それぞれの特色!
【1】Central Saint Martins College of Art and Design:私の通っている学校です。主にファッションやグラフィックデザインが有名ですがFine Artやシアターアクティング、建築、ジュエリー、プロダクト、環境デザインなど、アート&デザインに関するほとんど全ての専攻がある学校です。学生数も多く、課題数も多いです。とてもコンペティティブな人達が集まってくる学校なので頑張り屋さんにはピッタリです。逆にのんびり、ゆっくり自分のペースでやりたい方にはあまりお勧めしません。 【2】Chelsea college of Art and Design:Fine Artがとても有名な学校です。他にもデザイン、テキスタイル、環境デザインもあります。CSMとは逆にマイペースにやっていきたい方、自分で課題設定や、やりたい事がハッキリして自由に作品を作りたい人が集まっている学校というイメージです。校舎はテムズ川沿いにありTATE Britain museumの隣で中庭があり、UALの学校の中では1番大学のキャンパスらしい作りだと思います。
【4】London College of Communication:こちらはUAL唯一のグラフィックデザインだけの学校です。グラフィックデザインだけを専門的にデジタルもたくさん使って作品を作りたいという方にお勧めです。平面のグラフィックデザインだけでなく整った設備で映像を専門的に学びたい人も集まっています。図書館も充実しており、こちらもやはりグラフィックデザイン専門の本など幅広くそろっています。 【5】Wimbledon College of Art:この学校はロンドンではなく少し都心と離れたウィンブルドンにあります(テニスで有名ですね)。この学校もFine Artやファッション、デザインなどがありますが、有名なのはシアターデザインとシアターコスチュームです。都心の騒がしい感じが苦手でちょっと田舎のゆっくりした時間の中、黙々と勉強だけに集中したいという人が集まっているイメージです。 【6】Camberwell College of Arts:ここはFine Artやイラストレーションが有名な学校です。校舎は新しい建物と古い建物が合体してできています。古い校舎の窓はステンドグラスなどで出来ています。ここのイラストレーションは絵を描くだけでなく、インスタレーションなどの形式で作品を発表したりとイラストだけにこだわらない作品が多い印象があります。 2009年10月
ロンドンでのアートな日々♪
私は7月から2ヶ月間日本に一時帰国し、JCFLでの夏のイベントのお手伝いやJCFLの学生さん達と少しの間でしたが楽しい時間を過ごしました。そして現在私はロンドンの生活に戻り、毎日大格闘な日々を送っています。 今回のレポートは2つの事についてお話しようと思います。1つ目は9月17日から20日まで行っていたグループ展についてです。現在ロンドンで活躍しているデザイナー、アーティスト、計6名で行いました。場所はロンドンのアートとデザインが集まる町、Brick LaneのTHE RAG FACTORYという所。私はLondon College of Fashionの友人と立ち上げた『fashion + graphic design PROJECT』のブランド 『oui』として参加しました。 ブランドのLook Bookを制作!
今回私は初めてしっかりした機材を使い、モデルもエージェンシーから派遣されたプロのモデルを使って行いました。プロジェクターを使って撮影をする案やLook Bookのイメージが自分の頭の中にあるので、それを忠実に妥協せず作品にしようと決めていましたが、やはりシューティング当日はかなり緊張しました。プロジェクターうまくワークするかな?とかモデルはちゃんと来るのかな?とか、やはり初めてだと全てが不安要素に感じてきてしまいました。 タイポグラフィーの教室でも始まってしまえばやっぱりスゴく楽しい!!!!っていうのが物作りの良い所です。シューティング開始直後は私もモデルも他のスタッフも緊張気味でしたが、慣れたら楽しくてしょうがない時間になっていました。今回はとても納得のいくものに仕上がりました。今回の作品がまた何かにつながったらいいなと思っています。 London Fashion Week
私の先攻はグラフィックですがファッションも大好きなので、初めてのLondon Fashion Weekまる1日楽しみました!タイポグラフィーの教室会場はロンドンでも有名なSomersethouse。Somersethouseはコの字型に建物があり、通常、真ん中は広場になっています。Fashion Weekにかけて建物の中は全てデザイナーやブランドのブースにいくつも分かれ、真ん中の広場には真っ黒の大きな特設会場ができ、その中でキャットウォークが行われました。お仕事の関係で招待されたのでキャットウォークは観られませんでしたが、展示会は全て観させてもらいました。残念なことに不景気なせいか盛り上がりにいまいち欠けていた感がありましたが、やはり会場にはピンっと心地の良い緊張感が漂っていて、クリエイティブな人や物で溢れている会場は良い刺激になりました。 そして、来週からはついに新学期、最終学年の始まりです。残り1年、最後の学生生活を思いっきり楽しんで、学んで、成長できるよう頑張ろうと思います。 |