イギリス留学現地レポート2010年2月
ロンドンを駆け抜けたニュース
先日イギリスで最も有名なファッションデザイナーの一人、Alexander McQueenが 亡くなったニュースで今ロンドンはテレビも新聞も彼の話題で溢れ返っています。Alexander McQueenは91年にCentral Saint Martinsを卒業後ファッションデザイナー として活躍し10年間に4度もBritish Designer of the Yearを受賞しました。 私達の学校の卒業生という事もあり学校でも先生や学生の間で彼の話で持ち切りです。彼のご冥福を祈ります。 インスピレーションを得るアムステルダム旅行
ヨーロッパの良い所は、それぞれの国が独自の文化を持っていて、同じものが全くないこと。そして何よりヨーロッパ圏内であったら違う国でも気軽に、簡単に行き来できるところだと思います。
アムステルダムに滞在中の1週間、友達がお勧めのステキなグラフィック、プロダクトのお店や若手アーティストが作品を展示販売しているギャラリーカフェや地元の人しか知らないような古本市場やタイポグラフィーの教室蚤の市に行ったり、羽ペンやインク壷、封筒に封をする用のシーリングワックスなど手紙用品だけを取り扱っているアナロググラフィックデザイン好きな人にはたまらないお店などを巡りました。なかでも一番の私のお気に入りはアムステルダム公共図書館でした。 2年程前にオープンしたこの図書館は建物自体から中のデザイン全てが洗練されていて、まさにダッチデザインを集約した場所です。公共施設とは思えない程のお洒落さで子供用の本コーナーは秘密基地のようなデザインになっていたり、建物の真ん中は吹き抜けになっていて、最上階はオランダの有名な家具や照明を使った素敵なレストランになっていました。学校帰りに毎日この図書館で閉館するまで勉強したくなるような場所でした!
小さな絵本1つ買うにも、売っているおじさんが丁寧にどんな人が何年代にどういった形で売る事になったのかなどのバックグラウンドを説明してくれたりもします。どんなモノにも物語があるのだなっと思える素敵な瞬間で、そういったモノが持っている背景を知っているだけでそのモノに対しての愛着が特別になります。 ロンドンは赤いバスがメインの移動手段ですが、こちらはトラムです。道路に引かれた線路の上をチリンチリンと音を鳴らして走る様はとっても可愛くて個人的に好きでした! オランダの美大潜入!
イギリス以外の国の美術大学の校舎に入るのは初めてだったのでちょっぴり緊張しました! 校舎内はシンプルな作りでしたが使われている椅子や家具がとってもカラフルでまたロンドンの大学とは違う雰囲気が感じられました。 でも、やっぱりどこの国でも自分の好きな事を学べているので学生達の表情はロンドンの学生と同じでみんな生き生きとキラキラしてまタイポグラフィーの教室した。そういう所はやっぱり変わらないんだな!っと思いモノ作りに真剣になっている 学生達の顔を見てやっぱりアートって世界共通で素晴らしい!!!と再確認しました。
お目当てのディックブルーナ美術館に行き、彼のブラックベアー時代の直筆の原画や当時出版用で考えられた色見本帳などが見れました。ユトレヒトの街自体がとても奇麗で時間がゆっくりとながれているような場所でした。 今週から私のコースは遂に卒業制作に突入です!このアムステルダムでもらった刺激を作品にたくさん盛り込めるよう頑張ります! 2010年5月
初夏のロンドンとアイスランド噴火の影響
アイスランドの火山噴火の火山灰の影響で一時はヨーロッパ全域がパニック状態に陥りましたが、現在は徐々にもとの生活に戻りつつあります。こういう大きな自然災害が起こると、どんなにテクノロジーが進んでいる今日でも人間はやっぱり>小さいなっと思ったりもします。ここ数日毎日のようにロンドンの空を覆う飛行機雲がいっさいなくなり、空の移動手段がなくなるとココは本当に小さな島国なんだな~と思ったりもしました。 卒業制作のお手伝い
だいたいこの時期になると、卒業制作にとりかかっている3年生は不眠不休で作品創りに取りかかります。その中で、(特にFashion studentが多いのですが)色々なスキルを持っている人たちにお手伝いを求めて生徒は血眼になってヘルパーを探します。こちらの美大生では、とても良くあることで色々なアーティスト、デザイナー、学生と協力して作品を完成させます。
私はLCFのニットウェアー先攻の人のグラフィックを担当しました。創ったものは布サンプルブックの装丁×3冊、それにつける帯のデザイン、スケッチブックのレイアウトと装丁、シューティングのお手伝いなどをしました。 布サンプルの装丁はブックカバーを一から行いました。ブックバインディングという授業をとっていたのでとてもその時の知識が役にたちました。バインディングするものが紙ではなく布ということで少し手間取りましたがこういった自分の作品創りでは手を出さない領域も学べることは今後きっと何かの役にたつと思いました。
私は撮影時は主にデザイナーのアシスタントをしました。スタイリングの相談役やモデルが作品を 着たあとの調整などを行いました。 私自身学校で学んでいることはグラフィックですが、ファッションにも非常に 興味があるのでこういった手伝いはやっていて非常に楽しかったです。 LCFのファッションショー
私も卒業制作提出まであと残り1ヶ月!今度は私の番です! 現在私は先生の薦めもあり、卒業制作用の為だけにブログを先月から始めました。 次回のレポートは私自身の卒業展と卒業式についてご報告できると思います。 2010年9月
卒業制作のテーマはmy nostalgia
16歳のとき初めてLondonに来て、なんてステキな国なんでしょう!と思い19歳でLondonに住み始めて美術大学に4年間通って、たくさん笑って泣いて怒って つくって つくって つくって。うしろも、右も、左も脇目もふらずひたすら走って気が付きました。ずいぶん遠くまで来たなっと。 私の卒業制作のテーマは my nostalgia センチメンタルでノスタルジー、メランコリックな言葉では上手く言い表せない気持ちや感情を作品にしました。
Londonに来てからのこの4年間、ロンドン、アムステルダム、パリ、ブリュッセル、ヴェネチア、ベルリンと足しげく通った 蚤の市、マーケット、ヴィンテージフェア。 古くて 色あせて壊れそうなぐらい美しくて人の手から手へ。前の持ち主の顔はわからなくてもそのモノを見るとどんなに大切にしていたか、どんなに愛情を注いでいたかが伝わって、10年、50年、100年、自分が生まれるうんと前のその持ち主のことを考え、思いを馳せる、そんな時間が私は大好きです。
デザイナーがデザイナーとして認知されていない時代のモノたちは本当に美しい。職人技のような技術をおばあちゃんのおばあちゃん世代が、誰かの為にひと針ひと針刺繍したドレス。そういったモノからたくさんの事を学びました。 そして ふっと思いました。古いヨーロッパのハガキや切手になぜ私はこんなにも言葉に言い表せない感情を抱くんだろう?と。私は日本人でニホンで生まれてニホンで19年間育ったのに。その答えは、私が子供の頃お気に入りだった絵本の中にありました。 毎晩必ず眠りにつく前に絵本を読んでもらっていました。「おやすみなさいフランシス」「くじらの歌声」「うさぎがくれたバレエシューズ」どれも大好きな物語です。
それはフランス語で書かれていて小さな女の子、カロリーヌが世界中を犬や猫と一緒に旅するお話です。とてもキレイな絵で、フランス語のわからないお母さんは挿絵に合わせてお話を作るので毎回読む度に違うお話にしてくれました。 そして主人公を私の名前で読んでくれるので自分も動物たちと一緒に旅をしている気分でした。電話で言われるまで、なぜかさっぱり「カロリーヌ」の絵本だけ忘れていました。 すべての原点となった絵本カロリーヌ
ドキドキしながら中を開くとそこに描かれていた景色はどれも見覚えのある風景でした。ロンドン、アムステルダム、パリ、ブリュッセル、ヴェネチア、ベルリン。 カロリーヌが動物たちと一緒に旅していた街に、私は無意識のうちにカロリーヌのあとを追っていたのです。もちろん子供の頃この絵本を読んでもらっていた時はヨーロッパがどこなのかさえ知りませんでした。知らず知らずのうちに美術留学先をヨーロッパに決め、この4年間でカロリーヌが訪れた都市を旅したのです。
全ての答えがこの絵本にありました。なぜ子供の頃からヨーロッパという場所に憧れていたのかも。子供の頃、毎晩絵本の中でしか会えなかった街に、モノに懐かしさを感じるようになったのです。アンティークマーケットで出会う古いモノたちに感じる言葉では上手く言い表せない懐かしいんだけど、どこか寂しくて、だけれど心のどこかがほっこり暖かくなる理由は、きっとこの絵本のせいでしょう。 こうして私の卒業制作はお気に入りの絵本へのトレビュート作品になりました。カロリーヌや、他の絵本に出てくる登場人物を絵にして小さな紙のパペットを作りました。 どこかに住んでいる誰かが、私がカロリーヌの絵本に感じたような感情を抱いてくれるように。1年後か、2年後か、5年後か、30年後か、私が死んだもっともっと後かわからないけれど。
1人に与えられるスペースはとても広く、たくさんのデザイナーやアーティストが見にきてくれました。 そこで私は作品の買い取りのお話と、ロンドンをベースで活躍しているバンドのアニバーサリーCDジャケットをアーティストとのコラボレーションとして、卒業作品と同じテイストで作ってほしいとの依頼が入りました。
場所はビックベンも見えるテムズ川沿いのRoyal Festival Hallで行われました。大学カラーの黒とピンクのローブと四角い帽子をのせ、とても楽しい卒業式でした。私の両親も卒業式に出席するため日本から来てもらいました。 1人1人名前を呼ばれ、壇上に上がり、大学の校長先生と握手をしてチューターの全員参加で、友達ともたくさん 写真を撮り、とても良い思い出となりました。 現在私はイタリアでデザインのお仕事を住み込みで行っています。 |