日本外国語専門学校 海外芸術大学留学科 芸術留学プログラム

海外芸術大学 入学審査
2010年度生のロンドン芸術大学審査
2011年3月18日

入学審査の様子

多様な進路に対応するカリキュラム

ロンドン芸術大学の審査を受ける学生文:海外芸術大学留学コース 中村先生

海外芸術大学の進学先として、常に強い人気を誇るロンドン芸術大学の入学審査が、1月26日にJCFL学内で開催されました。その結果、全員がそれぞれに適したコースへの進学を決めました。

今回の審査で特徴的なことは、ファインアート系進学希望者が多かった昨年とは反対に、デザイン系志望の学生が増加したことでした。デザイン系にはグラフィック・デザインをはじめ、ファッション、イラストレーションそしてスペシャル・エフェクト等の多様な方向が含まれます。

多くのデザイン志望者がそれぞれに異なる進路への進学をするためには、多様な方向性に対応するための確かな基盤と、個別の指導が必要になります。 そのため、今まで以上に多様な志望に応えることのできたこの結果は、私たちが独自に開発したアート&デザイン・カリキュラムが、学生の成長と海外芸術大学のニーズに的確に応えるものであったことの現れだと思います。

審査官からのフィードバック

 ロンドン芸術大学の審査を受ける学生
  今回の審査は、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションに所属する、トニー先生が行いました。トニー先生によるJCFLでの審査は、既に10年以上の経験があり、既にカリキュラムと学生の資質、その仕上がり具合については、熟知されています。そのため審査はスムーズに行われました。印象的だったのは、審査終了後に、「It’s a easy job」(簡単な仕事だった)と言ってもらえたことでした。


ポートフォリオ審査は形式的にほとんど制約がありません。受験する学生は、極端に言えば、何を見せることもできます。しかし、だからこそ、何を、どのように見せ、自分の何をアピールスするかが、審査のポイントになります。そのため、やはり専門的な指導が必要になるわけです。

トニー先生が今回最も注意深く、時間をかけて目を通したのは、やはりスケッチブックでした。スケッチブックには学生自身の考えや興味、可能性や技術が正直に反映されます。JCFLの学生は、各自が今回約20冊のスケッチブックを審査に持ち込んでいます。トニー先生はA1のポートフォリオを学生に説明させている間、スケッチブックの全てのページに目を通していました。そして、ポートフォリオに対する疑問も、すべてスケッチブックとの関連で聞かれました。

日本と英国の美術教育を比較すると、結果を重視する日本と、その過程を重視する英国に大別することができます。そしてその過程が具体的に定着されているのが、スケッチブックなのです。1つの作品を1週間で仕上げることができても、スケッチブックを短時間で完成させることはできません。つまりスケッチブックには日常的で主体的な学習の資質と積み重ねが現れているのです。

ライフドローイングの重要性

 ロンドン芸術大学の審査を受ける学生


スケッチブックの次に重視されていたのは、ライフドローイング、つまり日本的にいえば「人体デッサン」です。「デッサン」という言葉を聞くと、アカデミックなデッサンを思い浮かべる方も多いと思いますが、ここで求められているものは、アカデミックな意味での正確さよりも、対象を見ることの興味の強さと、そのイメージを画面の上に解釈するためのクリエイティブな能力なのです。そのことは、ドローイングの背景をどのように描くかという、一見、ささいな問題に端的に見ることができます。

ドローイングを描き始めた学生にとって、人体を写し取るだけでも大変なのに、その背景を描くことは仕事を難しくしているように思えます。しかし、実際に目の前に見えるモデルは、背景から切り取られてそこに立っているわけではありません。描く私たちとモデルの関係に気がつけば、むしろ背景から切り取られたモデルを描くことのほうが、不思議な行為なのです。

実はドローイングにおけるモデルと背景の関係は、アートに対する学生の考え方をあらわす、大事な指標になります。(審査官はこういう所を見逃しません)自分が作り出す世界が、それ自体として独立して存在することはありません。そこには意識的にせよ無意識的にせよ、社会的な環境や文化的な背景との関係が埋め込まれているのです。つまり、ドローイングの背景が意識的に描けることは、アートやデザインとその背景の関係を意識していることを表しているのです。そしてこの関係をどのぐらい重視することができるのかということが、英国と日本の芸術大学を分けるもうひとつの鍵なのです。

これから海外芸術大学への進学を希望する学生に期待すること

日本社会が長い停滞期にある中で、多くの若者が、世界中がこんな感じだと思っています。そのため、わざわざ海外まで留学する意味など無いと思っています。しかし、世界が日本と同じ停滞期にあるわけではありません。たとえばiPadという全く新しいデジタル・デバイスの登場や、FaceBookがエジプトの政治を変えつつあるように、世界はものすごいスピードで変化をしています。英国の芸術大学は、そのような流れを敏感に感じ取り、これまでにない全く新しいアート&デザインの姿を模索しています。

しかし、残念ながらこのような動きを、日本で感じ取ることはできません。経済的にも文化的にも停滞期にある日本とは反対に、世界は今、加速を強めています。10年後、20年後の世界で活躍するためには、この動きを敏感に感じ取らなくてはなりません。

 

 
 
 
 
 
©  2008 Japan College of Foreign Languages