日本外国語専門学校 海外芸術大学留学科 芸術留学プログラム

卒業生
ギャラリーで働く卒業生が来校!

イギリスのゴールドスミス大学でファインアートを学び、福岡でギャラリーに就職した海外芸術大学留学科の卒業生が、JCFLに来校してくれました。

(写真:台北の美術館で展覧会を立ち上げた時の、 日本と台湾スタッフでの記念写真。 山内さんは下の段の左端。)

卒業生
イギリス、ゴールドスミス大学ファインアート専攻卒業
2001年 海外芸術大学留学科 卒業 
自由の森学園高校出身 

 どんな所に就職しましたか? 

 福岡を拠点とし、現代美術を中心に扱っている商業ギャラリーに就職しました。草間彌生、細江英公をはじめとする国内の作家から、九州の地元作家の作品を扱っています。 また、90年代初頭より、台湾の現代美術を国交のない日本に紹介するべく、 多数の若手作家を日本に招待し、展覧会を企画してきたギャラリーです。
近年では、国内外の美術館を巡回する展覧会を企画する事業も行っています。

 どのように今の職場を見つけましたか?

 日本へ帰国後、一定の期間は地元である福岡に滞在すると決めていたので、ロンドン滞在中に福岡周辺の美術/文化関連施設を調べだし、 帰国後(2006・11)すぐに、片っ端から電話で問い合わせをし、アポなしで履歴書を配り歩きました。そんなとき、現在働いているギャラリーで、アルバイトを募集しようと考えていた、と言われ、その日のうちに履歴書を持参し、その場で面接をお願いした結果、半日のアルバイトとして採用されました。 もともと、正式な就職をする気は全くなく、制作を続けていくための費用と生活費を確保するための仕事/アルバイトを探していただけで、 特に準備といったら、できるだけ興味深い環境で仕事ができるよう、また、帰国後すぐに活動できるように、事前に場所のリサーチを行ったくらいです。

 現在の仕事の内容を教えてください

 アルバイトとしての採用当初(2006・12)は、単純な販売グッズの検品作業をしていましたが、その後、取り扱い作品のデータ作成や、海外との連絡に要する通訳・翻訳等、徐々にデスクワークに移り、今年の6月に正式にスタッフ(アシスタント)となるオファーを受けました。現在、ギャラリーで働くスタッフは、ディレクターを含め合計3名、 そのなかで英語を要する内容は全体的に私を通して行われるので、 私の仕事はとても広範囲に渡ります: 主に、海外の美術館、ギャラリー、アーティストとの日常的な連絡を始め、 海外(主にアジア・アメリカ)出張先での通訳、コーディネートや、 海外ゲスト(アーティスト、キュレーター、etc)訪問時の通訳、コーディネート、リサーチ・アシスタント、また、海外関連のプロジェクトの進行(コーディネート/プロデュース)をしています。
例としては、スタッフになった当初から通しての集大的な仕事で、これまで数年に渡り国内美術館を巡回してきた美術展(「造形集団 海洋堂の軌跡」展)の海外巡回が決まった際、台湾・台北市立美術館での開催に向けて、展覧会を国際展にバージョンアップし、立ち上げるまでの準備作業全般の進行を任されてきました。
数ヶ月に及ぶ台湾・学芸員スタッフとの共同作業、3000数点に及ぶ作品の管理、それらを輸出入するための通関手続き、海外版カタログ出版のための編集作業、そして、国内、ならびに現地での搬出入・設置作業等の末、11月中旬に展覧会が立ち上がりました。

この仕事を通して、良くも悪くも、それまではほとんど無知だった、特に日本の美術界の内部や、美術館のシステム、アーティストの作品制作やプロジェクト実現の裏側に実際に関わる事で、多様であり、同時に特定な方向から据えた美術や美術業界、またシーンに対する認識や視野が広がりました。また普段、直接的には出会えなかったかもしれない様々な人たちと、時には仕事上の関係を超えて、交流し、関わる機会に恵まれています。そして何より、経験や能力の有無に関わらず、次々に新しい内容の仕事を任せられる環境で、必然に、精神的にも、実用的なスキルの面でも、とても鍛えられています。

 海外の大学で芸術を学んでよかったと思う点は?

 私にとって、今までも、そしてこれからも、自分の制作や活動を続ける想いは、心理的な選択ではなく、常に自然に内にある、人生の核のようなもので、常に思考のプライオリティは、自分のプロジェクトにあります。あくまで自分の創作活動を続ける資金を確保するために始めた半日のアルバイトから、正スタッフになる話をもらった時も、多様な経験をすることは、自分の創作にとって大切だという想いと、活動に対しての理解を受けた上で決断しました。しかし、徐々に責任も仕事も増え、一週間のほとんどを仕事に費やさなければならない状態にあるのが現実。仕事と制作活動の両立のバランスは、常に不安定です。

そんななか、日々、この仕事を続ける意義を自分に問うているわけですが、大学での学びで、今とても大切だと思うことは、どんな環境でも、自分の姿勢をしっかり持つということ、そして、自分から何かを起こしていこう、変えていこうとする自発性だと思います。大学では、制作過程や作品を通して、自分自身としっかり向き合い、多様な視点から問い、まず自身が理解することを求められた。そして、自分が動かなければ、何も起こらなかった。どんな事をしていても、どんな経験でも、それを生かせるか生かせないかの答えは自分のなかにあり、どんな状況でも、自分自身で意味ある、興味深い体験や出会いに発展させることができる、ということ。その経験こそが、本当の糧になっていくのだと思います。

 今後の抱負を教えてください

 今後は、仕事を通して得た様々な体験や人との出会いを、仕事上の文脈を超えて、自身のためにどう生かしていけるか、自分のキャパシティをチャレンジしていきたい。そのなかで、これからの活動の在り方や方向性を、模索していこうと思っています。

卒業生バックナンバー


iaf SHOP という、数ある福岡のアートスペースの一つ。 ここでは、美術展覧会に限らず、幅い広いイベントも行われる。 福岡でアートや文化に関わる人たちに会いたい時は よくここに足を運ぶとか。

台北に出張中に、現地のartist in residenceの施設での opening partyに参加した時、インドネシアのアーティストと お互いの活動についてdiscussionしている様子。
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