カナダ留学現地レポートREPORTER
埼玉県立浦和第一女子高校出身 マウント・アリソン大学/宗教学専攻(4年制) 2008年3月
カナダの食について
朝は基本的にシリアル。時間はかからないし、作る(牛乳をかける行為を“作る”と言えるなら)のも食べるのもとっても簡単。なぜか家庭では台所で立ったまま食べる人が多い。ある時ふと気づきましたーニワトリの餌みたいだな。
なぜか野菜はサラダとして摂取されます。ご存知のように食材は熱を加えると収縮するので、炒めれば必要なだけの野菜を取ることは可能です。しかし生ではかなり難しい。なぜそれに気づかないのかー家庭科という教科はないのでしょうか。 「日本人はみんな健康志向なの?」と聞かれた事があります。それは米や魚、豆腐といったカナダで知られている日本食がとてもヘルシーだからです。でも我々は健康のために食べてきた訳ではありません。日本の風土や気質の結果です。むしろ健康に気を使っている人はカナダの方が多いように感じます。日本では、普通のものを普通に食べていれば十分なのですから。
カナダでは味も似たりよったりです。あるとき小さなパーティーがありました。主催者の人が料理を用意するのを手伝ったのですが…ピザとラザニア、でした。味一緒じゃぁ~~!(見かけが違うだけで材料一緒じゃないですか)とツッコミたいところを我慢して、「うわぁ、美味しそうだねぇ」と微笑んだのを覚えています。しかもピザは宅配、ラザニアはレンジでチンでした。 カナディアンに日本食を振舞った事が何度かありますが、「日本食って見かけも綺麗だし、何よりも味が全部違うのがすごいね」と言われました。確かに、日常レベルでこんなに沢山の種類の食材・調理法を持つ国は珍しいと思います。 激烈!コーラレース
日本にもカナダにも、それぞれ良い点・悪い点―より正確に表現するなら“私が”好きな点・嫌いな点があります。私が嫌いでもあなたは好きかもしれない。だから日本にいるうちからカナダの食に希望を失うのは早すぎます。自ら経験して、好きならラッキーだし嫌いなら例によって諦めるだけです。私はもう諦めました。クリスマスだろうが誕生日だろうが、テーブルの上でキャンドルが揺らめいていようが銀のナイフとフォークが光っていようが、出てくる食べ物に期待をしてはいけません。これは一種の悟りです。そして食に対する執着を捨てて、カナダが好きになりました。食以外なら、好きなところいっぱいありますもの。 いま私は、日本とカナダが同じくらい大好きです。食と風呂と冬は日本の方が好きだけど、ここの大学が、Mount Allison Universityが楽しくって仕方がない。仲良くなった友達の多くはカナダ生まれのカナダ育ちです。ここに来なければ彼らには会えなかった。1日10時間の勉強も、キツイけどそれと同時に面白い。高校までの勉強では分からなかった事が分かります。勉強して、意見を交換し合って、考え考えた結果ひらめくものがあるんです。この大学では、やらなきゃいけない事とやりたい事がいっぱいで、時がとても早く過ぎ去ります。この大学で学べて、この大学で会った友達と遊べて、とっても幸せです。 と、同時に、一時帰国が近づいているので、「帰ったら何食べようかなぁ」なんてヨダレをたらしています(笑)。 2008年6月
1年生を終えて
Mount Allison Universityの1年生を終えました。毎日が怒涛のように過ぎていって、やらなければならない事とやりたい事でてんてこ舞いだったので、もう1年終わってしまったなんて信じられません。まず結論からいえば、私はここに来てよかったです。もう毎日が楽しくって楽しくってどーしようもありません。ラクではないけれど(ハッキリいってとてもキツイです)楽しい生活というのは大変なものだと思いませんか?
まだたった1年生を終えただけで(しかもカナダ滞在期間は1年以下です)、何を言える身でもありませんが、これから留学を考えている人たちに私なりにメッセージを送ります。あまり深刻に受けとめず、「そういう考え方もあるのね」程度に考えていただければーと思います。 日本について知ること
それより、今のうちに日本について勉強して、話せるようになっていてください。これは大きな武器になります。友達の興味も、教授の興味さえもひくことができます。たとえば、 “Do you know the Golden temple?”と聞かれたときにただYesと答えるのではなく、誰がなんのために作ったかを話すことができる。銀閣寺についても触れることができる。ピカピカの金閣寺と銀の貼られていない銀閣寺から当時の幕府の衰えが見えるんだよと歴史について教えられる。たとえば、 “Cha-no-yu? Sen-no-rikyu!”と話題を振られた時に、千利休が好んだ質素な美について、しかしそれが秀吉の怒りをかい、自害を命じられたことについて話すことができる。たとえば、 “Japan has been always peaceful & good country.”と誉められても、我々が大戦時にどれだけひどい事をしたか説明することができる。これは私の例に過ぎません。
また、外国に住む日本人としての義務もあると考えています。ひどい行動をとるとそれがイコール日本人だと思われる、とはよく言いますが、それだけでなく、日本に対する誤解や言動も正さなくてはならない。ゲイシャは身売り-昔はそうだった、でも今は日本の文化としてステータスを持ってる人たちだ。箸を髪飾りに-かんざしとカンチガイしてるよ、似てるけどそれはひどすぎるょ。Jap(あろうことかこれを使ったのは教授です)-Japは太平洋戦争で使われた蔑称なのでやめて下さい、今はJPNが一般的です。 などなど。日本人の気質だと、相手を正すのは得意ではないかもしれません。でも海外に住んでいる以上、これは義務だと思います。 ムリをしたら勉強が楽しくなった!
たとえば、1学期は分からなくともとにかく勉強してなんとか好成績をだせました。でも勉強そのものを楽しんではいなかったんです。また、カナディアンとつるんではいたけれど無理をしてのことでした。彼らが大好きでしたが、まだ言葉や文化の違いにとまどっていました。1学期、私を突き動かしていたのは意地だったんです。 そして2学期、授業が面白ろすぎて困っちゃうくらいワクワクするものになりました(笑)。彼らといるのが自然体になり、もう絶対に離れたくないと思うほどの仲になりました。これが無理の結果です。自分を壊してしまうほどの無理は良くないけれど、ある程度までなら良い結果を生みます。こんな偉そうな事を言っている私も、まだ何も知らないに等しいです。この先には、もっと高い壁がいくつもあるでしょう。そう思うとゾクゾクしますー・・・ごめんなさい嘘です、ウンザリします。それでもやってみるしかないですからね。誰かが言っていましたょ、swim or sink! お金のかからない楽しみ
今、日本に帰国して2週間がたちましたが、この2週間で遊びに使った額は、MtA大学にいた8ヶ月間で遊びに使った額をはるかに超えています。久しぶりの浪費も楽しいのですがー・・・お金をまったく使わず(本当にみんな貧乏です)、相手の存在だけで満足しあうカナダ学生の友情って、なんだかステキです。 2008年9月
カナダに戻ってきました
夏休みを日本で過ごし、Mount Allison Universityに1か月早く戻ってきました。授業が始まるのは9月からなのですが、8月にカナディアンの小学生~高校生を対象にした、日本を学ぼうというサマーキャンプがあったんです。日本に興味を持っているカナダの子供たちに、その言葉や文化を教えることに貢献できるなんて素晴らしい!という事で、キャンプでスタッフとして働かせていただきました。
Japanese Campに参加
興味の対象は様々ですが(言語、食べ物、着物etc etc)特に目立ったのは漫画とアニメでした。私自身、日本の漫画・アニメとカナダのそれを比較すると日本の方がずっと洗練されているのは感じます。絵や構図が丁寧だし、話もよく練られています。しかしそれにしてもこの人気ぶりは・・・。 ところでアニメ好きは日本語の習得も早いです。ただ単に好きだから意欲がある、という事ではなくて、しょっちゅう日本のアニメを(英語字幕で)見ているから、耳が日本語に慣れているんですね。日本語を本格的に勉強したことはなくても生活の中で定期的に日本語を聞いているから、聞き取る能力がもう耳に備わっている、という事だと思います。これは驚きでした。 日本の文化を学ぶカナダの子供達
折り紙は、まずは基本として鶴を教えましたがそのあとが面白かったです。それぞれの性格がよく反映されるんですねぇ。折り紙の本を睨みながら必死に自力で作ろうとする子がいます。彼女はどうしても行き詰ったときだけ私のところに来て手伝いを求めますが、その難しいところを超えるとまた一人でやるんです。私にゆっくり折るように頼んで、その隣で同じ工程を踏むことで作ろうとする子もいます。また、私にひとつ作らせて、それを分解することでどう折られているのかを知ろうとする子もいますし、どの千代紙を使って何を折りたいかだけ決めると私に作るよう頼んで、自分は見てるだけ、という子もいます。お気に入りの作品が折れるようになると(兜でした)兜だけを20個も30個も作り続ける子もいました。折り紙がなぜここまで彼らの心を惹きつけたのでしょう・・・?一枚の紙から立体的な作品ができるのがワクワクしたのかもしれないし、日本の柄をちりばめた千代紙が綺麗だったからかもしれません。 朝から晩までびっしりとスケジュールの詰まったキャンプでした。体力的には大変でしたが、本当に楽しくて貴重な経験でした。キャンパーたちが、いつまでも日本への興味を失わず、願わくばいつか日本に遊びに、学びに、働きに来てくれたら嬉しいです。 赤毛のアンのプリンスエドワード島へ
州都Charlottetownに安宿だけとって、あとは何の予備知識もないまま出発となってしまいました。アンの村はどこにあるのか、どうやって行くのか、どこで何をするのか・・・。でも行けばなんとかなるものです。宿で賑やかな通りがどこにあるのか教えてもらって、インフォメーションセンターでアンの村に行く手段を聞いて、あとは自分の足で街を歩き回っていればカフェやアンの店、演劇場、スーパーなど、ここに3~4日観光しつつ暮らすための情報は集まります。そして翌日。Green Gablesに向かう道で、二人の旅行者に会いました。 一人はオーストラリア人でもう一人はイスラエルからです。みんな同い年で一人旅だったのですぐに仲良くなって、その日はずっと三人で観光しました。日本語訳だと恋人の小路・・・だったでしょうか、Lovers’ lane を一人がアン役、もう一人がギルバート役ということにして散歩したり、コスチュームがずらりと並んでいて自由に着られる部屋では「あぁ世界一のパフよ!」と興奮しながらパフスリーブのドレスに身を包んだり(といってもアンを読んだことない人にはわからないだろうなぁ)。思いっきり、典型的な観光を楽しんできました。
ある美術館では「日本人は家庭、自然、教育を愛する島国のものとしてアンの中に自分たちを見出している。にもかかわらずアンの率直な性格に当惑している。共感できるものと全く異なるものの混同が魅力のようである」と述べていました。ふーむなるほど。たしかに一理ある気はします。現代の日本人がどうであれ、日本の文化の根底にはそういうところが残っているはずですから(と願います)。 すてきな夏でした。あと1週間ほどで勉強漬けの日々が再開します。今年も頑張らなきゃだなぁ。 |