イギリス留学現地レポート2011年1月
レクチャーとセミナーからなるイギリスの大学の授業
イギリスの大学の授業には2種類の授業の形式があります。教授の講義を大人数で聞くLectureと15人程度のグループに分かれてディスカッションをするSeminarです。 Lectureはその授業を選択している学生全員で教授の話を聞く形式です。1年生は選択できる授業の数が少なく、みんなほぼ同じ授業を選択しているため、講義に参加する人数も多く、ひとつの講義で大体200人くらいが聴講します。このLectureで教授は授業をするわけで、Lectureの主な目的は「情報を得る」ことです。
このふたつの授業を支えているのがIndividual Study、すなわち自主学習です。大学では授業の時間数はあまり多くありません(学部にもよりますが、わたしの場合は週に9時間です)。SeminarやEssay(論文)の準備のため、そして授業の復習のために、あえて授業時間は少なくなっているのです。ですから、授業がないからといっても、残念ながら遊んでばかりいるわけにもいきません(笑)というのも、実はSeminarの準備が結構大変なのです。 Lectureで大まかな理論はわかっているといっても、やはりそれをもとに自分の考えを言葉にできるようにするためには、それなりの予習の時間が必要なのです。 イギリスの大学と日本の大学の違い
ちなみに、わたしが1番好きなのはSeminarです。みんなと話して行く中で、自分が気づかなかった点や、自分と異なる価値観の意見を聞くのはとてもおもしろいですし、なにより大人数のLectureと違い、人と人との距離が近いので、クラスメートと友達になりやすいです。 自分の文化に誇りを持つウェールズの人々
リバプールやチェスターなどのイングランドの都市に行くと、わたしの住むウェールズとは違い、道路標識などが英語のみの記述なのでいつもなんとなく違和感を感じてしまいます。独自の文化や伝統を大切にしているウェールズでは、ウェールズ語の保護に積極的で、街の標識はもちろん、広告や、大学の連絡メールなんかもすべて英語とウェールズ語の二ヶ国語表記なんです。大学では同じ授業を英語とウェールズ語で行っていて、何人かのウェールズ人の友人はウェールズ語の講義を選択しています。イングランドに併合されてから700年もたつのに、これだけ積極的に自分たちの文化を守りづけているウェールズの人々の姿勢には、本当に頭が下がりますね。 2011年3月
国際政治サークルでブリュッセルのEU本部へ
EUはもともと、戦争の原因になる資源(石炭と鉄鋼)を共同管理することで、戦争を防ごうという目的のもと設立されました。その後資源のみではなく、経済的にも協力をするようになり、現在では環境問題や人権などの問題にも協力して解決していこうという機関になりました。簡単に言ってしまうと、「ヨーロッパの問題は国ごとに解決するのではなく、ヨーロッパの国みんなで話し合って解決しようよ」というヨーロッパの国々の共同体です。最近では政治的なつながりも深くなってきたので、政治を勉強するヨーロッパの学生には非常に興味のある機関のようですね。 と、いうわけで。今回みんなで見学に行ってきたわけです。 イギリスとヨーロッパの違い
メンバーの中でEU参加国以外の国出身なのは日本人のわたしだけで、非常に部外者感を感じましたが(笑)、おそらくこのような機会でもなければ日本人のわたしがEUを見学するようなことはなかったと思うので、とても貴重な体験ができたと思います。こういう、イギリス(ヨーロッパ)の大学だからこそ!という経験ができるのも留学の利点といえますね。
イギリス人の友達も「イギリスはヨーロッパ(大陸)とは違う」といっていましたし、やっぱり少し距離があるぶん感覚も違うのかもしれませんね。 正直、優雅で洗練された大陸ヨーロッパから帰ってきたときは、「イギリスどうも野暮ったいな・・・」なんて少し思いましたね。そこがイギリスらしくていいところなのですが(笑) 様々な国に行くチャンスがあるイギリス留学!
2011年5月
大変でも刺激の多い海外生活
ゆるーいイギリス生活
イギリスに来る前は、こちらでの生活は日本のそれととても違うと思っていました。実際、生活様式やサイクルはかなり違う部分があると思います。わたしが住んでいる場所がかなり田舎なので(笑)余計にそうなのかも知れませんが、全体的に日本の暮らしと比べてスローペースな感じがします。 24時間営業のスーパーなんてものはありませんし、学校の事務所に書類の発行申請なんかをしてもとても時間がかかったり、寮のお風呂の水がでないと事務所に電話をすると「おっけー!今からすぐ行くから!」と言われて作業員が来るのは翌日だったりとか…(笑)日本の生活と比べると待たされることは多いです。せっかちな日本人には「さっさとやっちゃってよ…」とイライラすることもあるかもしれませんが、慣れてくると「ま、いっか」という感じになってきて逆に楽なもんです。自分もゆるーくしていられるので(笑) 積極的じゃない西洋人?
日本で暮らしていると、いろいろな海外の情報が入ってきて、「西洋ってこういうとこ」「西洋人ってこういう人」というイメージができてきます。本当の部分も、誇張の部分もありますが、特に人の性格に関しては、同じ国や宗教の人でも人によって本当にまちまちで、なかなかひとくくりにできません。留学というのはそういう「国籍」や「人種」のイメージを越えて、自分たちは一人と一人の人間なんだ、大して変わらない同じ人間なんだな、ということを再確認する機会になっています。 自分たちと他の国の人たちの人としての本質が思っているほど違わないこと、そして文化面などで違う部分は「あ、この人はこういう風に私と違うんだな」ということを「知る」こと。グローバル化する昨今の世界のではとても大切なことではないかと思います。 2011年7月
留学生活1年目、大変だったことは?
留学でやはり1番に苦しんだのは語学の問題です。わたしが学んでいる国際政治学では文献を読むことや問題について議論をすることが非常に重要視されているようで、母国語で学ぶ場合と比べると壁はかなり厚かったように思います。 英語の文章を読んで、自分の考えをまとめ、セミナーでクラスメイトと英語で議論をしていく、というのは、やっぱりとても大変なことでした。 「イギリス人並み」を諦めてスッキリ
言葉の問題は最初に比べればかなり改善されてきたようには思います。授業の予習はどうにかですが終わるようになりましたし、セミナーでもある程度、自分の立場を表現できるようにはなってきました。ただ全体的にはどちらかというと「できるようになった」というよりは「できないことに慣れた」という方が正しいかもしれません。 年度が始まった頃のわたしは、なんでもイギリス人並みにやりたい、と思っていましたが、やっぱりそれは無理なんですね。わたしにとって英語はあくまで「外国語」ですし、厳しいことを言ってしまえば、英語それ自体でどんなに頑張ってもネイティブにはかないません。頑張って、ネイティブに近づくことはできても、そこには越えられない壁があります。 同じ学部にいる先輩はこちらで10年近く学んでいますがそれでも「毎日言葉の壁を感じている」と言っていました。「ああもうこればっかりはしょうがないんだな、彼らと同じようにはできないんだな」、と思うようになって、「じゃあもう今できることをできる限りでやってく以外にないんだな」、というスタンスになってから、かなり焦りは少なくなりました。開き直りとでも言うのでしょうか…(笑)そうやって諦めてできる限りで頑張っているうちに、少しずつ進歩していった気がします。焦っているうちは実際に進歩があってもなかなか自分の成長を感じられず、自分がまるでだめな気がして、負のスパイラルでした(笑) 国際政治学。日本人である利点
外国で勉強するということは、楽しいばかりではないと、この1年でつくづく感じました。言葉の壁はその中でも最大の課題でしたし、きっとこれからも大きな壁であり続けるでしょう。語学力を伸ばす努力をしていくこと、そして同時に、そのハンデをカバーする長所を伸ばしていくこと、そうやってこの先も頑張っていくことで、他にはない自分のスタイル、学問上の強みを、この先の2年間で身につけていけたらいいと思っています。 現在は9月の末に新学期が始まるまで、約4カ月の夏休みに入ったところです。休みに入ってさっそくギリシアとオーストリアに行ってきました。かなり多くの留学生は夏休みを利用して帰国しているようですが、わたしはせっかく夏のヨーロッパを体験する機会でもあるので休み中はこちらに滞在します。年度中は時間がなくて勉強ばっかりだったので、他にも旅行などできたらいいな、と思っています。 2011年9月
夏休み!WWOOFを利用して農場で働く
そのうちの約1カ月、WWOOFというプログラムを利用して有機農場の手伝いをしてきたので、今回はそのレポートをしたいと思います。 WWOOFというのはWorld Wide Opportunities on Organic Farmsの略で、ボランティアを募集する有機農場の集まりです(日本にもありますよ!)。ボランティアは受け入れ先の農場で決まった時間働く代わりに、農場はボランティアに宿泊先と食事を提供する、という仕組みになっています。WWOOFはメンバー制で、1年ごとのメンバー登録があり、そのために一定の金額(イギリスの場合20ポンド)を支払う必要がありますが、その後宿泊費と食費を払わなくていいので、わたしのように夏休み中宿なしな人(学生寮の契約が年度内のみのため)やバックパッカーなどが多く参加していました。 WWOOF UKの場合、ホスト(受け入れ先)は南はフランスにほど近いチャンネル諸島から、北はスコットランド最北のシェトランド諸島まで、イギリス全土にあります。今回わたしが滞在させてもらったのはスコットランド最大の都市グラスゴーから南東に約1時間ほど行ったサウス・ラナークシャーにあるコミュニティです。イギリス北部スコットランドの文化に興味があって、以前から行ってみたい!!と思っていたのでこの機会に滞在してみることにしました。 まるでロード・オブ・ザ・リング!スコットランドの魅力
地形も割合穏やかな平地が多いイングランドに対してスコットランドは山が多くなりますし、イングランドよりも田舎で現代的なビルなどの数も少ないので、見た感じの雰囲気もかなり違う印象を受けました。映画ロード・オブ・ザ・リングは、スコットランドの先住民族でもあるケルト人の神話に大きな影響を受けているのですが、その物語に魅かれてイギリスに来たわたしにとっては、スコットランドはまさにイメージ通りの“イギリス”!で、非常にときめく滞在でした(笑) 共同生活で英会話力アップ
さして難しい仕事ではないのですが、単調な肉体労働も多く、“スコットランドらしい”天気である雨や霧の日は仕事前に覚悟が要りましたね(笑)あとはいままで勉強で使っていた言葉と全く違う言葉を使ったので(国際政治学では「苗床」とか「堆肥」なんて言葉は使わないので…)一通り言葉を覚えるまでは仕事内容の説明を理解するのに少し苦労しました。 その反面、いろんな国から来た他のボランティアとの宿舎での共同生活はそれぞれの国のことを話したり、言葉を教え合ったり、とても楽しかったですし、より生活に密着した英語(学部で使うような小難しいものではなくもっとスタンダードなもの)を使う実践訓練になったと思います。他に日本人がいないのは学部での生活と同じでしたが、ルームシェアで朝から晩まで24時間みんなと一緒の生活は、学部にいるよりもはるかに生活の上で英語を使う訓練になりましたね。滞在の後半では自分のスピーキングの正確さが上がったことを自分でも感じました。 一番のお気に入りの街 インヴァネス
グラスゴーから電車で3時間ほどのインヴァネスは建物も街の雰囲気もザ・イギリス!ヨーロッパの優雅なそれとは違う、重々しく古めかしい建物が多く、いかにもおとぎ話や魔法使いの物語ができそうな昔のイギリスの雰囲気を留めた街で、ギリシャやオーストリア、ドイツなど、何か所か訪れた今年の旅先の中でも断トツ1番で気に入った街でした。ただ緯度が高いこともあって8月だと言うのに気温は最高気温でも15度前後…とっても素敵な街だったけど、冬のことを考えると住むのはやめとこう、と思う場所でした(笑) イギリスの大学は夏休みが長いので、いろいろなことに挑戦する時間があります。学部の友人の何人かは国外に語学留学に行ったり、数週間のインターンに行ったりしているようですし、バックパックでいろんなとことろを旅行している人もいます。わたしは準備に出遅れてこの夏はWWOOFのみでしたが、来年はもう少し早めに予定を立てて、もっといろんなことに挑戦してみたいですね。スコットランドがとても気に入ったので、来年はバックパックで最北といわれるオークニー諸島やシェトランド諸島なんかにも行けたらいいと思っています。 ともあれ、このレポートが掲載されるころには大学生活2年目が始まっているはず…。楽しみ楽しみな来年の夏を迎えられるよう、まずはしっかり頑張っていこうと思います(笑) 2011年12月
大学2年目!紛争や経済、軍事面など多角的に国際政治を学んでいます
今期は「International Conflict Resolution」、「Global Justice」、 「Theorising and Realising Duties to Distant Strangers, War, Politics, and Strategy」の3つ科目を選択しています。 「International Conflict Resolution」は日本語で言うところの「紛争解決学」。特に国内紛争やテロに焦点を当てて、国際社会がどのように解決していくべきかを議論しています。「Global Justice」では先進国と発展途上国の間での貧困の問題を基礎に、私たち(先進国の人間)は途上国の人たちにどのような責任があり、どのように接していくべきなのか、主に貿易などの経済的な問題に絞って学んでいます。「Theorising and Realising…」、これは戦略学を専攻している私は必修の科目なのですが、主に安全保障や勢力均衡(国家間の力関係が一定に保たれた状態のこと)、抑止力(強い軍隊を持つことによって、相手に攻撃を思いとどまらせること)などを勉強しています。 他学部の講義に参加!学びの幅が広がります
同じ大学の「フィルム学部」に「メディアポリシー」を扱った授業があったので、個人的に教授に連絡をして、もぐりこませてもらっています(笑)。教授が親切な人で、講義だけでなく、セミナーへの参加も許可してくれたので、正規登録している学部の授業の予習にひいひい言いながら、こちらの予習もしているところです(笑)。正式に履修登録をしていなくても、先生と個人的に連絡を取って授業を受けたりできるのがウェールズ大学の良さですね!学部生は正式に登録できる科目数が限られているので、臨機応変に対応していただけるととても助かります。 議論慣れした3年生たちと同じ授業でがんばっています!
そして全ての大学かは確証がないのですが、イギリスの大学では多くの大学が1年時の成績を卒業成績に換算しません。したがって2年生たちは、「今年から本番…!」という感じで本気モードになっています。去年本気モードでやっていてもアップアップだったのに…みんなが本気になったら私はついていけるのかしら?と、不安になっていますが…、今年も頑張ってこようと思います!(笑) |