アメリカ 憧れの
スポーツ科学留学

[ vol.1 ]

スポーツ選手を支える
「アスレチック
トレーナー」とは?

Reporter

JCFL海外留学科 アメリカ・カナダ留学コース卒。アメリカのウエスト・バージニア大学、シラキュース大学大学院でアスレチックトレーニングを学び、アスレチックトレーナーの国家資格を取得。アメリカでアスレチックトレーナーとして経験を積んだ後、現在、JCFL教員。

こんにちは。海外留学科の小島です!JCFLアメリカ留学コースを卒業し、アメリカ・ウエストバージニア大学・同大学院で「アスレチックトレーニング」を学び、アメリカのアスレチックトレーナー資格を取得、実際にトレーナーとして働いてきた私が、今、注目の「スポーツ科学」留学について5回にわたってナビゲーションします!

私がアメリカでアスレチックトレーニングを学ぶことになったきっかけ

そもそも、私が留学をしようと思ったのは、バスケットボール部で全国大会を目指していた高校最後の年にヒザを怪我し、当時私の高校に週に1回来ていただいていた「怪我の予防とマネージメントの医療スペシャリスト」である「アスレチックトレーナー」の方に出会ったことがきっかけです。
 
当時「トレーナー」と聞くと、マッサージをしたりテーピングを巻いたり、筋力トレーニングを教えたりするような人を想像していましたが、その方のお世話になっていくうちに、「アスレチックトレーナー」という職業はそれ以上に奥が深く大変貴重な職業だということに気がつき興味を持ち始めました(詳しくは下記参照)。
 
そして、その方から「アスレチックトレーニング」という学問がアメリカには存在していて、スポーツ医学に大きく関わる、特殊で専門的な技術と知識を学ぶことができることを教わったんです。「アメリカのスポーツが大好きで始めたバスケットボール」で怪我に苦しんだ私が、今度はそのアメリカでスポーツ医学の学問を勉強できる機会があることを知った時、海を渡って勉強しようと決意しました。
 
下記で詳しくお話しますが、アメリカは最先端のスポーツ医学を誇っていて、大学の教育システムも確立され実習も充実している上、取得できる資格も法的に認められているため、日本よりもアメリカで学ぶことは圧倒的な優位性があります。また、他のスポーツ科学の分野も、海外で学ぶことは先進的また専門的知識が身に付くだけでなく、日本と比べて英語を含めたコミュニケーション力がつくことも大変魅力的でした。
 
さて、先ほどから「アスレチックトレーナー」という仕事について語っていますが、「アスレチックトレーナー」とは、何でしょうか?

アスレチックトレーナーとは?

スポーツが盛んなアメリカでは大学の部活も本格的!

アスレチックトレーナーとは、スポーツをする上で考えられるあらゆる怪我、事故、病気また心の病など心身の健康管理や指導を主とする「医療スペシャリスト」を指します。
 
足首の怪我や腰の痛みなどに対処するだけでなく、部活動中の脱水症状からの事故や、疲労骨折の予防などの危機管理を徹底しコーチの教育も行います。
 
また、コーチの体罰によって学生が自殺した問題がニュースで取り上げられていますが、体罰や行き過ぎた練習法によって心身ともに疲れきってしまっている学生を適切にケアし、当事者のコーチや学校を指導します。場合によっては適切な機関に報告をすることもアスレチックトレーナーの仕事の一つです。

アメリカでは国家資格の「アスレチックトレーナー」

アスレチックトレーナーにおけるアメリカと日本の違いは明確で、その違いがアメリカでアスレチックトレーニングを含めた「スポーツ科学」の優位性を物語っています。
 
アメリカではアスレチックトレーナーはアメリカ医学会 (AMA: American Medical Association)によって看護師・理学療法士と同様、準医療従事者として認められています。全米アスレチックトレーナーズ協会(NATA: National Athletic Trainers’ Association) はアスレチックトレーナーの母体機関で、教育の向上、資格取得、社会的地位の促進、職業の確保など、多くの面でアスレチックトレーナーを支えている協会です。
 
この中の資格認定委員会(NATA BOC: NATA Board of Certification)がアスレチックトレーナーの国家資格認定を行い、これによって法的に効力を持った資格を取得することになります。
 
このため、アメリカではアスレチックトレーナーの学問と資格は教育的、法的、また職業的に確立されていて、プロスポーツだけでなく高校や企業、またリハビリ施設を含めたすべてのスポーツ環境でアスレチックトレーナーが活躍しています。私自身もこの国家資格を取得し、アスレチックトレーナーとして働いた後、帰国しました。

日本の「アスレチックトレーナー」を取り巻く環境は発展途上

一方、日本ではアスレチックトレーナーという概念がようやく確立していく段階で、まだ一般の人にはもちろん、医学界でもある程度でしか認知されていないのが現実で、もちろん法律で決められた資格はありません。日本では、「柔道整復師」「マッサージ師」「鍼灸師」「理学療法士」など、肩書きはさまざま人たちが「スポーツトレーナー」としてスポーツ環境で活躍しています。
 
そんな中、最近は日本体育協会による「アスレチックトレーナー」の資格が誕生し、文部科学省の認定を得ました。ただ、資格取得に必要な講習を受講できる大学の施設や実習環境は少なく、世界的にかなり遅れをとっています。それ以上に深刻なのが、アメリカのように資格自体が医療従事としての資格ではないために、アスレチックトレーナーの社会的地位は低く、活動そのものが大変制限されてしまいます。そのため、上記(柔道整復師、マッサージ師、鍼灸師、理学療法士)の資格を持った医療従事者が「トレーナー」活動を本業の仕事と兼任するため、怪我や死亡事故、そして体罰が起こる現場に常にいることは不可能であり、本来の「予防・監督」という役割を満足に行えないのが現状です。ですから、防げるはずの怪我や事故はなくならず、大きな問題点として議論されています。 このように、日本とアメリカでは「アスレチックトレーナー」を取り巻く環境には、大きな差があり、最先端を行くアメリカで「アスレチックトレーニング」を学ぶことは、とても有意義なことなのです。
 
海外の大学では、「アスレチックトレーニング」以外にも、さまざまなスポーツに関わることを「学問」として、学ぶことができます。それも最先端をいくものばかり。次回は、スポーツを取り巻く学問「スポーツ科学」についてお話します。
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